第17回シンポジウムの日時、プログラムが決定致しましたのでご
今回も会場とオンラインのハイブリッド開催となります。
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日時 2024年12月10日 (火) 13:00 – 17:00
場所 東京大学医科学研究所1号館1階講堂
終了後、東大医科学研究所近代医学記念館にて懇親会を開催いたし
会場でのご参加、懇親会ご参加ご希望の方は、11月30日(土)までに
に会場参加希望、会場参加/懇親会参加希望と明記しご連絡くださ
懇親会につきましてはできるだけ事前の振り込みをお願いしたく、
皆様のご来聴、ご参加をお待ちしております。
ご不明の点などございましたら上記 にお問い合わせください。
ゲノム創薬・創発フォーラム 第 17 回シンポジウム
The 17th Sympodium of Genome Drug Discovery and Emergence Forum
「中分子モダリティによる undruggable target への挑戦」
“Addressing Undruggable Targets through Mid-Molecule Modalities”
2024 年 12 月 10 日 (火) 13:00 – 17:20
東京大学医科学研究所1号館 1 階講堂
開催趣旨
ゲノム創薬・創発フォーラムはヒトゲノム解明が進みつつあった 1998 年に発足したゲノム創薬フォーラムに源流をもちます。2013 年には創薬だけでなく様々な医療分野への展開を目指したゲノム創薬・医療フォーラムとなり、2019 年より、異なる分野の専門家の議論によるイノベーションを誘発したいという思いが 「創発」 という言葉に込められ、新たにゲノム創薬・創発フォーラムとして発足しました。
今回のシンポジウムでは、「中分子モダリティ による undruggable target への挑戦」 をメインテーマとして、核酸やペプチドの創薬に焦点を当てます。これらモダリティは従来の低分子薬や抗体医薬では困難とされてきた 「undruggable target」 に対する有望なアプローチとして期待されており、近年の創薬技術の発展にともない革新的な成功例が現れています。
核酸医薬は、特定の RNA や DNA 配列に対して高い親和性を持ち、遺伝子発現の抑制、遺伝子編集、遺伝子補充など、様々なメカニズムで作用します。近年、アンチセンス核酸や siRNA を用いた治療薬、LNP-mRNA を用いたワクチンが新たな領域を切り開き、化学修飾や DDS との組み合わせで、さらなる進展が期待されます。ペプチド医薬品は、特定の受容体やタンパク質を標的とし、糖尿病、がん、ホルモン異常、貧血など、多様な応用例が存在します。特に、最近の GLP-1 アナログの成功は大きなインパクトをもたらしました。加えて、経口投与を可能とするより drug-like なペプチド創薬の技術が進化しており、さらなる発展が期待されています。また、これら核酸及びペプチド創薬において、計算科学を基盤とした分子設計は核心的な役割を果たしており、AI の活用が急速に進んでいます。これにより中分子創薬の可能性をさらに広げる状況となっています。
本シンポジウムでは、核酸やペプチドの創薬について、計算科学をベースとした最先端の分子設計の第一人者をアカデミアからお招きし、最新の知見について発表いただく予定です。また、具体的な医薬品の開発研究の取り組みを製薬企業で活躍されている研究者からも発表頂きます。本シンポジウムが、アカデミア研究者や製薬企業の皆様にとって実践的かつ革新的なアプローチを取り入れる一助となることを期待しています。多くの方々のご参加を心よりお待ちしております。
オーガナイザー︓
第一三共株式会社 研究開発本部プレシジョンメディシン統括部 トランスレーショナル研究所長吉ヶ江 泰志
中外製薬株式会社 研究本部 川邊 良樹
ゲノム創薬・創発フォーラム 第 17 回シンポジウム
The 17th Symposium of Genome Drug Discovery & Emergence Forum
日時︓2024 年 12 月 10 日(火)13:00-17:20 / Time & Date: 13:00-17:20, December 10th, 2024
場所︓会場およびオンライン会議 / Venue: On-site and Web Meeti
東京大学医科学研究所1号館 1 階講堂 / Auditorium at Building 1, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo
主要テーマ︓「中分子モダリティによる undruggable target への挑戦」
Main Theme: “Addressing Undruggable Targets through Mid-Molecule Modalities”
座長︓第一三共株式会社 研究開発本部 プレシジョンメディシン統括部 トランスレーショナル研究所長吉ヶ江 泰志
中外製薬株式会社 研究本部 川邊 良樹
Chairs: Yasushi Yoshigae, PhD, Vice President, Translational Science Laboratories、Precision Medicine Department, R&D Division, Daiichi Sankyo Co., Ltd.
Yoshiki Kawabe, PhD, Research Division, Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.
プログラム︓/ Program:
13:00-13:05 「開会挨拶」 東京理科大学生命医科学研究所 教授 松島 綱治
“ Opening Remarks “ Kouji Matsushima, MD, PhD, Professor, Research Institute for Biomedical Sciences, Tokyo University of Science
13:05-13:15 「開催趣旨」 第一三共株式会社 研究開発本部 吉ヶ江 泰志
“Organizing Purposes“ Yasushi Yoshigae, PhD, R&D Division, Daiichi Sankyo Pharmaceutical Co., Ltd.
13:15-14:00 1.「siRNA 核酸医薬品開発の現状と展望」
東京科学大学 総合研究院 TIDE センター 特任教授 程 久美子
“Current Status and Prospects of siRNA Nucleic Acid Drug Development”, Kumiko UI- TEI, PhD, Professor, NucleoTIDE and PepTIDE Drug Discovery Center, Institute of Research, Institute of Science Tokyo
14:00-14:40 2. 「糖原病 Ia 型本邦好発変異を標的とした新規核酸医薬の創出研究」
第一三共株式会社 研究開発本部 ディスカバリー第四研究所 専門研究員 伊藤 健太郎 “Investigation of a novel oligonucleotide therapy targeting the prevalent variant in Japanese GSDIa patients.”, Kentaro Ito, PhD, Researcher, Discovery Research Laboratories IV, R&D Division, Daiichi Sankyo Co. Ltd.
14:40-15:20 3. 「新規人工核酸の開発と神経筋疾患治療薬への応用」
田辺三菱製薬株式会社 創薬本部ニューロサイエンスユニット先端化学グループ グループ長 熊谷 新司
“Discovery of A Novel Nucleic Acid Analogue and Its Application in Neuromuscular
Disease Therapeutics”, Shinji Kumagai, Manager, Neuroscience Unit, Research Division, Mitsubishi Tanabe Pharmaceutical Corporation
Break
15:30-16:15 4. 「AI とシミュレーションで広がるペプチド設計の可能性」東京科学大学 情報理工学院 情報工学系 准教授 大上 雅史
“Peptide Design Driven by AI and Simulation Computations”, Masahito Ohue, PhD, Associate Professor, Department of Computer Science, School of Computing, Institute of Science Tokyo
16:15-16:55 5. 「細胞内タンパク質間相互作用を標的とした経口投与可能なペプチド創薬」中外製薬株式会社 研究本部 創薬化学研究部 グループマネジャー 古市 紀之
“ Orally Bioavailable Peptide Drug Discovery Targeting Intracellular Protein-Protein Interactions”, Noriyuki Furuichi, PhD, Group Manager, Discovery Chemistry Department, Research Division, Chugai Pharmaceutical, Co., Ltd.
16:55-17:10 6. 「東京科学大学 中分子創薬コンソーシアムのご紹介」東京科学大学 情報理工学院 情報工学系 教授 秋山 泰
“Introduction of Middle Molecule Drug Discovery Consortium at Institute of Science Tokyo”, Yutaka Akiyama, PhD, Professor, Department of Computer Science, School of Computing, Institute of Science Tokyo
17:10-17:20 「閉会挨拶」 中外製薬株式会社 研究本部 川邊 良樹
“Closing Remarks” Yoshiki Kawabe, PhD, Research Division, Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.
siRNA 核酸医薬品開発の現状と展望
東京科学大学・総合研究院・TIDE センター・特任教授東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・特任研究員
東京理科大学・研究推進機構総合研究院核酸医薬研究センター・客員教授
程 久美子
近年の核酸を用いた医薬品開発の進歩はめざましい。その中でも、小分子干渉 RNA( small interfering RNA , siRNA)の臨床応用はこの数年の間に急速に進んでおり、世界的にはおよそ1年に1製剤というハイスピードで開発が進められている。現在までに 4 遺伝子に対する 6 種類の siRNA が FDA に認可されており、日本国内でも4種が承認されている。
siRNA は 21~23 塩基程度の小さな 2 本鎖の RNA であり、塩基配列の相補性を利用して標的 mRNA に対合し、RNA 干渉という機構により mRNA を切断して遺伝子発現を抑制する。その作用機序から、本手法はゲノム配列を基盤とすることで初めて成立した技術といえる。現在、すでに臨床的に用いられている第一世代の siRNA は、ヒトのすべての遺伝子の中で標的とする1遺伝子のみを特異的に抑制することができる。現状では、これらの標的遺伝子はすべて肝臓で働くもので、そのノックアウトマウスでは目立った異常が見られない、あるいは肝臓での補償機構が働くとされているものである。すなわち、これらの遺伝子は抑制しても、特に大きな問題は生じない遺伝子を標的としているといえる。一方で、上市した siRNA でがんや遺伝性疾患を対象としたものはない。その理由は、これらの原因遺伝子は、わずか
1塩基でも変異が生じると疾患の原因となることが知られている一方で、多くの場合、変異がない正常な遺伝子の機能を抑制すると異常が生じる可能性があるからである。しかしながら、siRNA によって1塩基の違いを区別することは、極めて高度な技術が要求されるため、がんや遺伝性疾患の原因遺伝子は、現状では核酸医薬品開発においても undruggable targets と言える。我々は、このような遺伝子に対して1塩基レベルの違いを区別して抑制可能な第二世代の siRNA の開発を進めている。本講演では第一世代と第二世代の siRNA の配列設計の分子基盤と作用機序のちがい、さらにはその使い分けについて概説したい。
著者略歴
早稲田大学・理工学研究科・物理学及応用物理学専攻・博士後期課程修了(理学博士)三菱化成生命科学研究所・特別研究員
日本医科大学・医学部・助手/講師/助教授
東京大学・大学院理学系研究科・生物化学専攻・生物情報科学学部教育特別プログラム・特任助教授東京大学・大学院理学系研究科・生物科学専攻・准教授
東京大学・大学院新領域創成科学研究科・情報生命科学専攻・准教授(兼担)
現在 東京医科歯科大学(東京科学大学)・統合研究機構・TIDE センター・特任教授、東京大学・大学院理学系研究科・特任研究員、東京理科大学・研究推進機構総合研究院核酸医薬研究センター・客員教授
引用文献
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程久美子 siRNA 核酸医薬 A to Z Pharma Medica 特集 siRNA が切り開く循環器の疾患修飾治療 41, (161)13-(165)17、2024.株式会社メデイカルレビュー社
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浅野吉政、程久美子 RNA 分野の新技術 miRNA やsiRNA を用いた創薬研究。RNA の科学 –時代を拓く生体分子–(金井昭夫 編) 188-199、2024. ㈱朝倉書店
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小林芳明、程久美子 オフターゲット効果を回避する siRNA 医薬の分子設計。核酸医薬・mRNA 医薬の製造分析の基礎と基盤技術開発(小比賀 聡・井上 貴雄 監修)119-126、2023. ㈱シーエムシー・リサーチ
糖原病 Ia 型本邦好発変異を標的とした新規核酸医薬の創出研究
第一三共株式会社 研究開発本部 ディスカバリー第四研究所 専門研究員
伊藤 健太郎
近年、nusinersen、viltolarsen が本邦でも薬事承認される等、スプライシング制御型アンチセンス(Splice-switching oligonucleotide: SSO)が注目を集めている。我々は、相補 RNA 鎖に対する結合力、ヌクレアーゼ耐性の高さを特徴とする修飾核酸の一つ、2′-O,4′-C–エチレン架橋核酸(ENA)を含む SSO の研究に取り組んでいる[1]。本演題では糖原病 Ia 型新規治療薬の創製研究について紹介したい。
糖原病 Ia 型は、グルコース-6-リン酸脱リン酸化酵素(G6Pase)をコードする G6PC の機能欠損変異により低血糖、肝腫大、肝腺腫等を呈する先天代謝異常症である。デンプン質の頻回摂取療法の導入により予後は大幅に改善したが、依然として各症状のコントロールは十分とは言えない。機能欠損を伴う G6PC 変異の内、東アジア(日本、韓国、中国)好発変異 c.648G>T は、アミノ酸置換を伴わない synonymous 変異ながら、異常スプライシングを引き起こし G6Pase 活性を損なう。この異常スプライシングの是正は正常 G6Pase 産生、更には糖原病 Ia 型の様々な症状改善につながる可能性がある。
我々は、当該変異に起因する異常スプライシングを是正するSSO を探索し、ENA を含むオリゴヌクレオチド、DS-4108b を見出した。更に G6PC c.648G>T を両アレルにノックインしたマウス(糖原病 Ia 型マウス)を新たに作出し、DS-4108b の効果の検証を試みた。今回、非臨床研究の成果に焦点をあてて取り組みを紹介する[2]。
著者略歴
2014 年 3 月 早稲田大学大学院 先進理工学研究科 生命医科学専攻 修了
2014 年 4 月 第一三共株式会社 入社、以降核酸創薬に従事
2023 年 4 月 第一三共株式会社 ディスカバリー第四研究所(現職)
2024 年 1 月 広島大学大学院 医系科学研究科 小児科学 修了、博士(医学)
引用文献
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Ito K. et al. Curr Issues Mol Biol. 2021 Sep 25;43(3)
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Ito K. et al. J Clin Invest. 2023 Dec 1;133(23)
新規人工核酸の開発と神経筋疾患治療薬への応用
田辺三菱製薬株式会社 創薬本部ニューロサイエンスユニット グループ長
熊谷 新司
核酸医薬である nusinersen は,脊髄性筋萎縮症治療を劇的に変える革新的治療薬とな
り,核酸医薬がこれまでにない医療価値を提供しうる創薬モダリティであると示しました.以降も,次々と画期的な核酸医薬が上市されており,新規モダリティの中でも一定の存在感を示してき ています.
田辺三菱製薬においても,疾患の根治・寛解が可能な創薬モダリティとして核酸医薬に注目し,原因遺伝子等を標的とする創薬研究を進めています.現在までに,大阪大学薬学部小比賀教授との共同研究により見出された新規人工核酸を用いて,神経・希少疾患領域等において複数のプロジェクトを推進してきました.
本発表では,これら田辺三菱製薬における核酸創薬の取り組みより,新規 2’-amino-LNA誘導体の合成と評価[1],[2],およびこれを活用した 2 つの神経筋疾患治療薬プロジェクトより得られた非臨床研究の成果[3],[4]をご紹介いたします.
著者略歴
2002 年 3 月 早稲田大学大学院理工学研究科 修了
2002 年 4 月 田辺製薬株式会社(現・田辺三菱製薬株式会社) 入社
2011 年 3 月 名古屋商科大学大学院マネジメント研究科 修了
2015 年 4 月 大阪大学大学院薬学研究科に 1 年 3 か月派遣.以降,核酸創薬に従事
2021 年 4 月 創薬本部神経科学ユニット マネジャー
引用文献
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H. Sawamoto et al., Org. Lett., 2018, 20, 1928
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H. Sawamoto et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2023, 88, 129289
-
T. Kakimoto et al., Biomedicines, 2023, 11, 2339
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石川潔ら, 日本核酸医薬学会年会講演要旨集, 2022, p.278
AI とシミュレーションで広がるペプチド設計の可能性
東京科学大学 情報理工学院 情報工学系 准教授
大上 雅史
深層学習に代表されるAI(機械学習)技術の生命科学や化学領域への応用は、近年爆発的な広がりを見せている。タンパク質の立体構造をアミノ酸配列情報から高精度に予測する AlphaFold2 の登場から 4 年経ち、また AlphaFold3 も登場し、AI を活用した研究は数多く見られるようになった。激動の時代となる中で、本講演では、特にペプチド創薬における開発候補分子設計の支援を目的とした計算技術を紹介する。AlphaFold2 を活用した、標的結合が期待されるペプチドを設計する手法[1]、AlphaFold2 の入力操作による head-to-tail 環状ペ プチドの設計[2]、分子シミュレーションを活用した環状ペプチドの細胞膜透過性予測[3][4]、分子の活性/物性寄与を可視化する手法[5]など、我々はペプチド創薬の加速を目指して計算技術の応用を模索してきた。計算で自由自在に分子設計が可能となる未来はまだまだ遠いものの、その兆しは少しずつ見えはじめている。
著者略歴
2014 年 東京工業大学 大学院情報理工学研究科 博士後期課程修了、博士(工学)
2014 年 日本学術振興会 特別研究員–PD
2015 年 東京工業大学 大学院情報理工学研究科 助教(2016 年 情報理工学院)
2024 年 東京工業大学 情報理工学院 准教授(2024 年 10 月 大学名改称)
引用文献
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Kosugi T, Ohue M. Biomedicines, 10(7): 1626, 2022.
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Kosugi T, Ohue M. Int J Mol Sci, 24(17): 13257, 2023.
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Sugita M, Fujie T, Yanagisawa K, Ohue M, Akiyama Y. J Chem Inf Model, 62(18): 4549-4560, 2022
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Sugita M, Sugiyama S, Fujie T, Yoshikawa Y, Yanagisawa K, Ohue M, Akiyama Y. J Chem Inf Model, 61(7): 3681-3695, 2021.
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Kengkanna A, Ohue M. Commun Chem, 7: 74, 2024.
細胞内タンパク質間相互作用を標的とした経口投与可能なペプチド創薬
中外製薬株式会社 研究本部 創薬化学研究部 グループマネジャー
古市紀之
細胞内のタンパク質–タンパク質相互作用(PPI)は創薬標的として非常に重要だが、従来の低分子化合物や抗体医薬では十分にアプローチできない「細胞内難標的」が数多く存在している。本研究では、そうした標的に対する新規モダリティーとして、分子量 1000-2000 程度の環状ペプチドに着目し、経口投与可能な薬剤の創薬プラットフォームを構築した。
まず、膜透過性と代謝安定性を両立する「ドラッグライクな」環状ペプチドの構造的特徴を明らかにした。高度にN-アルキル化され、高い疎水性、11 残基前後の適切な長さが重要であることを明らかにした 1) 。次に、このような構造的特徴を有するペプチドを効率よく合成するため、連続 N-アルキルアミノ酸の効率的な合成手法を開発した 2) 。従来は、(1)ジケトピペラジン (DKP)環化副反応の抑制、(2)立体障害によるペプチド結合形成の困難さ、(3)酸性条件下での不安定性が課題となっていたが、本研究ではそれらを解決する反応条件を設定し、この新規合成法により、多様な構造を有する高度 N-アルキル化環状ペプチドを合成することに成功した。
さらに、多様なドラッグライク環状ペプチドを提示可能な mRNA ディスプレイライブラリーから得られた RAS 阻害ペプチドヒットを起点に、そのヒットから側鎖修飾によりドラッグライク性を向上させることで、経口投与可能な臨床化合物 LUNA18 を創出した 1)3)。
以上の一連の成果により、リピンスキーの法則に従った従来の低分子創薬と同様のプロセスで、生理活性を有するペプチドの構造最適化と経口化を実現する新規創薬モダリティーを提示する ことができた。本プラットフォームにより、これまでアプローチが困難であった様々な細胞内難標的に対しての薬剤開発が期待できる。
著者略歴
2003 年 関西学院大学理工学部化学科博士後期課程修了(勝村成雄教授)
2003-2005 年 ペンシルバニア大学化学科博士研究員(Prof. Amos B. Smith, III)
2005 年 中外製薬(株)入社
2020 年~現在 創薬化学研究部 グループマネジャー
引用文献
1) Ohta, A.; Iikura, H. et al. J. Am. Chem. Soc. 2023, 145, 24035.
2) (a) Nomura, K.; Iikura, H. et al. J. Med. Chem. 2022, 65, 13401. (b) Nomura, K.; Iikura, H. 有機合成化学協会誌 2024, 82(5), 513.
3) (a) Tanada, M.; Iikura, H.; Shiraishi, T. et al. J. Am. Chem. Soc. 2023, 145, 16610. (b) Kage, M.; Hayashi, R.; Tanada, M.; Shiraishi, T. et al. Bioorg. Med. Chem. 2024, 110, 117830.

